管理会社が倒産したら、預けている敷金や、回収済みでまだ送金されていない家賃はどうなるのか。オーナーにとっては切実な問題です。
この点について、多くの記事は「倒産の兆候を見抜きましょう」と書きます。しかし送金の遅れや事務所の縮小といった兆候が見えたときには、すでに手遅れであることがほとんどです。素人が決算書から経営状態を読み解くのも現実的ではありません。
実は2021年から、オーナーの資産を守るための義務が法律で管理会社に課されています。この記事では、まず倒産の実態をデータで確認したうえで、「潰れなさそうな会社を見抜く」のではなく「制度を守っている会社を選ぶ」という現実的な方法を整理します。
データで見る:管理会社の倒産は他人事ではない
帝国データバンクの集計によると、2025年度の企業倒産は全国で1万425件。前年度から3.5%増え、4年連続の増加となりました。
このうち不動産業は309件(前年度296件)で4.4%増。過去10年で最も多い水準です。
注目すべきは「小規模な倒産が増えている」こと
同じ集計で、負債額5,000万円未満の倒産が6,475件と全体の62.1%を占め、2000年度以降で最多となりました。
これは、倒産しているのが大手ではなく中小・零細規模の事業者が中心であることを意味します。地域密着型の管理会社を選ぶオーナーにとっては、まさに直視すべき数字です。
「人手不足倒産」が過去最多を更新している
もうひとつ見逃せないのが、2025年度の人手不足倒産が441件と、初めて400件を超えて過去最多を更新した点です。
賃貸管理は、入居者対応・巡回・原状回復の手配・入出金管理と、人の手がかかる業務の塊です。人手不足の影響を受けやすい業種であり、この統計は管理会社にとって無関係ではありません。
倒産したとき、オーナーのお金はどうなるのか
管理会社が破産すると、その会社の財産は破産財団としてまとめられ、債権者に分配されます。ここで問題になるのが、管理会社が「預かっているだけ」のお金の扱いです。
問題になりやすい3つのお金
| 種類 | リスク |
|---|---|
| 回収済みで未送金の家賃 | 会社の口座に混在していると、財団に取り込まれるおそれがある |
| 入居者から預かった敷金 | 同上。返還義務はオーナーに残るため二重負担になりうる |
| サブリース契約の場合の賃料 | 契約自体の帰趨が問題となり、状況はさらに複雑になる |
特に敷金は深刻です。入居者への返還義務は最終的にオーナーが負う一方で、管理会社に預けたお金が戻ってこなければ、オーナーが自己資金で返還することになりかねません。
だから法律は「分別管理」を義務づけている
こうした事態を防ぐため、2021年に全面施行された賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)が、管理会社に複数の義務を課しています。ここが、管理会社選びで最も確認すべき部分です。
① 管理戸数200戸以上は国への登録が義務
管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣への登録が義務づけられています。登録の有効期間は5年で、継続するには更新申請が必要です。無登録での営業や名義貸しには罰則が定められています。
つまり登録の有無と更新の履歴は、その会社が制度の枠内で継続的に営業してきたことの証明になります。
② 家賃・敷金の分別管理が義務
管理業者は、受領した家賃・敷金・共益費を、自社の固有財産や他の管理受託契約にもとづく金銭と分けて管理しなければなりません。
これがオーナーの資産を守る中核の規定です。会社の運転資金と混ざっていなければ、預り金であることを主張しやすくなります。
ただし注意も必要です。分別管理は帳簿上の区分でも足りるとされており、口座が物理的に分かれているとは限りません。また、義務があることと、倒産時に確実に全額を取り戻せることは別の問題です。だからこそ、次の確認が意味を持ちます。
③ 営業所ごとに業務管理者を選任
各営業所・事務所に1名以上の業務管理者を置くことが義務づけられています。賃貸不動産経営管理士または宅地建物取引士が国土交通省指定の講習を受けるなどの要件があり、管理業務が適正に行われているかを監督する役割を担います。
④ 契約前の重要事項説明が義務
管理受託契約を結ぶ前に、契約内容や履行に関する事項を書面で説明・交付する義務があります。この説明が形式的に流されるようであれば、その時点で姿勢を疑うべきです。
契約前に確認したい3つのこと
確認1:登録番号を提示してもらう
「賃貸住宅管理業者 国土交通大臣(1)第○○○○号」といった形式の登録番号があるはずです。括弧内の数字は更新回数を示すため、事業の継続年数の目安にもなります。
管理戸数200戸未満で登録義務がない会社でも、任意で登録している会社は制度への意識が高いと評価できます。
確認2:分別管理の方法を、具体的に説明できるか
「法律で分別管理が義務づけられていますが、御社では具体的にどう管理していますか」と聞いてみてください。
専用口座を分けているのか、帳簿上の区分なのか。この質問に具体的に答えられる会社は、義務を理解して運用しています。「法律どおりやっています」としか返ってこない場合は、実態を確認する価値があります。
確認3:送金サイクルと、入出金の見える化
家賃の回収から送金までの期間が長いほど、管理会社の手元に滞留する金額は大きくなります。毎月何日に送金されるのかを契約書で確認してください。
あわせて、オーナー自身が入出金や空室状況をいつでも確認できる仕組みがあるかどうかも重要です。専用アプリやウェブ画面で自分で確認できれば、月次報告を待たずに異変に気づけます。倒産対策としてだけでなく、日々の管理精度を測る指標にもなります。
「兆候」を待つのではなく、平時の運用を見る
送金の遅延、担当者の頻繁な交代、事務所の縮小といった兆候は、たしかに危険信号です。しかしこれらが表面化した時点で、打てる手は限られています。
それよりも、平時から次の点が守られているかを見るほうが実効性があります。
- 送金日が毎月きちんと守られているか(1日でも遅れたら理由を確認する)
- 月次報告書が定期的に届いているか、内容が具体的か
- 問い合わせへの返答が遅くなっていないか
- 担当者が代わったとき、引き継ぎが機能しているか
これらは倒産の予兆であると同時に、そのまま管理品質の指標でもあります。日常的に見ておく価値があります。
それでも倒産してしまったら
実際に管理会社が倒産した場合、初動で押さえるべき点を挙げます。
- 破産管財人が選任されているかを確認する。選任後は、原則として管財人が窓口になります
- 入居者への連絡ルートを確保する。家賃の振込先変更を速やかに通知しないと、滞納と区別がつかなくなります
- 敷金の預かり状況を確認する。契約書と入金記録を突き合わせ、金額を確定させます
- 管理受託契約の扱いを確認する。次の管理会社を探すのと並行して進めます
- 早い段階で弁護士に相談する。債権の届出には期限があります
とくに入居者への通知は最優先です。ここが遅れると、家賃が旧管理会社の口座に振り込まれ続け、回収がさらに難しくなります。
まとめ
- 不動産業の倒産は過去10年で最多。しかも小規模事業者の倒産が主流になっている
- 倒産で問題になるのは未送金の家賃と預かり敷金。敷金は返還義務がオーナーに残る
- 賃貸住宅管理業法は登録・分別管理・業務管理者・重要事項説明を義務づけている
- 契約前に登録番号・分別管理の方法・送金サイクルの3点を確認する
- 兆候を待つより、送金日の厳守と報告の定期性という平時の運用を見る
「絶対に倒産しない会社」を見抜くことはできません。しかし制度を守り、お金の流れを透明にしている会社を選ぶことはできます。それが現実的なリスク管理です。
この記事について
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の法律判断を提供するものではありません。実際に倒産に直面した場合や、契約内容の判断が必要な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。制度の内容は改正される場合があります。
参照した情報
- 企業倒産の集計:帝国データバンク「全国企業倒産集計 2025年度報」(2026年4月公表)
- 賃貸住宅管理業の登録制度:国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト
- 業務管理者・分別管理義務等:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会
数値・制度内容は2026年8月時点のものです。




