自主管理と管理委託はどちらが得か|手取りで比べる判断基準

「管理会社に家賃の5%を払うくらいなら、自分でやったほうが手元に残る」——自主管理を選ぶ理由の多くはここに集約されます。実際、国土交通省の調査では家主の約2割が自主管理を続けています。

ただし、この比較は委託料という「支出」だけを見た比較です。判断に必要なのは、自分が動く時間と、空室・滞納・トラブルが起きたときの損失まで含めた最終的な手取りです。この記事では、その比べ方を具体的に示します。

自主管理と管理委託の役割分担

まず、何が自分の仕事になるのかを正確に把握します。管理会社に委託した場合と自主管理の場合で、誰が担うかを並べます。

業務管理委託自主管理
入居者募集・条件設定管理会社オーナー(仲介会社と個別交渉)
内見対応・鍵の受け渡し管理会社オーナーまたは仲介会社
入居審査・契約手続き管理会社オーナー
家賃の集金・入金確認管理会社オーナー(毎月の通帳照合)
滞納督促管理会社オーナー
クレーム・設備故障対応管理会社(24時間体制の会社も)オーナー(時間帯を問わず)
共用部の清掃・点検管理会社または委託業者オーナーまたは個別発注
退去立会い・原状回復の精算管理会社オーナー
除排雪・凍結対応管理会社または委託業者オーナー(降雪のたびに)

この表で注目してほしいのは、右側の列に「時間が読めない業務」が集中していることです。清掃のように予定を組める作業と、深夜の水漏れ連絡のように予定を組めない作業では、負担の性質がまったく違います。

委託料を「時給」に換算してみる

家賃6万円×8室、月48万円の物件で考えます。委託料5%なら月2万4,000円です。

この物件で自主管理をした場合、平常月でも次の作業が発生します。

  • 入金確認と帳簿付け:月2〜3時間
  • 共用部清掃・ゴミ置場の管理:月4〜6時間
  • 入居者からの連絡対応:月1〜3時間
  • 業者手配・立会い:月0〜4時間

平常月でおおむね月8〜15時間。月2万4,000円を12時間で割ると、時給に換算しておよそ2,000円です。

この数字をどう見るかは人によります。本業の時間単価が2,000円を下回る、あるいは時間に余裕があり物件も近所、という条件が揃うなら自主管理は合理的です。逆に、本業を持っていて物件が車で30分以上先にあるなら、この時給では割に合いません。

平常月では収まらない月がある

問題は、上の見積もりが何も起きなかった月のものだという点です。退去が1件出れば、立会い・原状回復の見積比較・募集条件の見直し・内見対応で、その月だけで20〜30時間が飛びます。札幌なら、12月から3月は除排雪と凍結対応がここに上乗せされます。

本当の差は「委託料」ではなく「空室と滞納」で出る

手取りに最も効くのは、実は委託料ではありません。

先ほどの物件で、自主管理にすると空室期間が平均1か月延びたとします。年間の損失は6万円。委託料の年額は28万8,000円ですから、これだけでは埋まりません。しかし、2室分の空室が各2か月延びれば24万円で、委託料はほぼ相殺されます。

項目自主管理管理委託
委託料(年)0円▲28.8万円
空室期間の差(2室×2か月)▲24万円0円
滞納1件が3か月続いた場合▲18万円初期対応で短縮できる可能性
自分の作業時間(年150時間)拘束ありほぼなし

つまり「委託料を払わない」という節約は、募集力と初期対応の速さで簡単に打ち消されるということです。委託料の5%が高いかどうかは、その会社が空室期間と滞納期間をどれだけ短くできるかで決まります。

自主管理が続かなくなる3つの分かれ目

自主管理は「始めたら続く」ものではありません。次のいずれかに該当したら、委託を検討する時期です。

1. 物件と自宅の距離が離れた

転居や相続で、物件まで車で30分以上かかるようになると、内見立会いも設備故障の初動も現実的でなくなります。「すぐ行ける」が自主管理の前提条件です。

2. 戸数が10戸を超えた

戸数が増えると、入金確認・契約更新・退去対応が同時並行で走ります。1棟6室なら年2件程度の退去も、20室なら年6〜8件。この規模から、作業量は戸数に比例せず、それ以上のペースで増えます

3. 自分が動けない期間が生まれた

入院、長期出張、家族の事情——理由は何であれ、数週間手が離せない状況は誰にでも起こります。自主管理はオーナー本人が単一障害点なので、代われる人がいません。「今は元気だから大丈夫」ではなく、動けない期間が来ることを前提に体制を組むべきです。

全部か無かではない——部分委託という選択肢

自主管理と全部委託の間には、いくつも中間があります。負担の大きい部分だけを切り出す方法です。

形態委託する範囲費用の目安向いているケース
集金代行家賃の集金・送金・滞納督促家賃の3%前後入居者対応は自分でできるが、入金管理が煩雑
募集のみ委託入居者募集・契約手続き成約時の手数料空室が出たときだけ困っている
建物管理のみ清掃・点検・除排雪作業内容による入居者とは直接やり取りしたい
全部委託上記すべて家賃の5%前後本業がある/遠方/戸数が多い

特に札幌では、冬期の除排雪だけを委託する形から始めるオーナーが少なくありません。12月から3月の負担が突出しているためです。

判断するための5つの質問

次の質問に答えてみてください。「いいえ」が2つ以上あれば、部分委託以上を検討する段階です。

  1. 物件まで30分以内で行けますか
  2. 平日の日中に電話を取れますか
  3. 深夜・早朝の連絡に対応できますか
  4. 信頼できる修繕業者を2社以上確保していますか
  5. 自分が1か月動けなくなったとき、代わりに動ける人がいますか

特に4番と5番は見落とされがちです。自主管理は「安く済ませる方法」ではなく、自分が業務を引き受ける経営判断です。引き受けられる体制があるかどうかで決めてください。

まとめ

  • 自主管理は家主の約2割。委託料の節約分は、空室期間と滞納期間の差で簡単に消える
  • 委託料を時給換算すると2,000円前後。ただし退去が出る月と冬期は見積もりが崩れる
  • 距離が離れた・10戸を超えた・自分が動けない期間が生まれた、のいずれかが続けられなくなる分かれ目
  • 全部か無かではなく、集金代行・募集のみ・建物管理のみといった部分委託から始められる

どの形が合うかは物件の立地・戸数・オーナー自身の状況で変わります。委託した場合の収支を具体的に知りたい場合は、複数社に「現在の空室期間と滞納率をどう改善できるか」を数字で聞いてみてください。委託料の安さではなく、その回答の具体性で選ぶのが確実です。

失敗しない賃貸管理会社の選び方 オーナーが最初に確認すべき3つのポイント

1

入居率を公開しているか

公開している会社は、それだけ数字に自信がある証拠です。非公開の場合は、直近の実績を面談で必ず確認しましょう。

2

オーナー・入居者の対応窓口があるか

専用アプリなどオーナーが状況を確認できる仕組みと、入居者からの連絡を24時間受けられる体制。ここが手薄だと、対応の遅れがそのまま退去につながります。

3

原状回復工事の費用負担はどうか

退去のたびに発生する原状回復費は、収支を大きく左右します。オーナー負担が実質0円になる仕組みを持つ会社もあるので、必ず確認しましょう。

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