管理会社に頼めること・頼めないこと|賃貸管理業務の全体像

管理会社を選ぶとき、多くのオーナーは「どこまでやってくれるのか」を気にします。しかし実務でトラブルになるのは、やってくれると思っていた業務が契約に入っていなかったというケースです。

国土交通省の調査によれば、家主の約半数が管理会社との間で何らかのトラブルを経験しており、その代表例として「管理業務内容の認識相違」が挙げられています。つまり、業務範囲の思い違いは例外ではなく、よくある事故です。

この記事では、法律上の「管理業務」の定義から出発して、委託できる業務の全体像と、管理会社には法律上できない業務までを整理します。

法律が定める「管理業務」とは何か

賃貸住宅管理業法において、管理業務は大きく2つに分けられます。

区分内容
維持保全建物・設備の点検、清掃、修繕(またはその手配)を、部分的でなく一体として行うこと
金銭の管理家賃・敷金・共益費などの受領、送金、精算

ここで重要なのは、この2つは別々のものだという点です。「家賃は集金してもらっているが、建物の維持保全は入っていない」という契約もあり得ます。逆もまた然りです。

自分の契約がどちらを含むのかは、管理受託契約書の業務範囲の欄で確認できます。

委託できる業務の全体像

実務では、管理業務は次のように整理すると分かりやすくなります。

入居者に関する業務

  • 入居者募集(仲介会社との連携、募集条件の提案)
  • 入居審査、保証会社の手配
  • 賃貸借契約の締結事務
  • 家賃の集金と送金
  • 滞納の督促
  • 入居者からの問い合わせ・クレーム対応
  • 契約更新の事務
  • 退去立会い、敷金精算

建物に関する業務

  • 共用部の清掃
  • 設備の点検・法定点検の手配
  • 修繕の手配と業者の選定
  • 原状回復工事の手配
  • 巡回、状況報告

札幌では、ここに冬季業務が加わる

札幌の物件では、上記に加えて除雪・排雪、空室の水抜き、凍結対応が実務上の重要業務になります。これらが管理委託料に含まれるのか、別料金なのかは会社によって扱いが分かれます。

冬季の対応範囲を確認しないまま契約すると、初めての冬に「それは含まれていません」と言われることになりかねません。

管理会社には「できない業務」がある

ここは意外と知られていない部分です。管理会社は万能ではなく、法律上、代理できない業務があります。

法的手続きの代理はできない

弁護士法により、報酬を得て法律事務を取り扱うことは弁護士でなければできません。したがって管理会社は、次のような業務を代理できません。

  • 明渡しを求める訴訟の提起・遂行
  • 滞納家賃の法的な取立て(支払督促や訴訟)の代理
  • 賃借人との法的紛争における代理交渉

管理会社ができるのは、あくまで事務的な督促や連絡までです。「滞納が長期化したら訴訟までやってくれる」と期待していると、いざというときに動けません。

実務では、提携弁護士を紹介する形をとる会社が多くあります。長期滞納が発生したときの流れをどう想定しているかは、契約前に確認しておく価値があります。

最終的な意思決定はオーナーが行う

賃料の設定、大規模修繕の実施、契約更新の可否といった経営判断は、オーナーの権限に属します。管理会社は提案と実行を担いますが、決めるのはオーナーです。

逆に言えば、いくらまでの修繕なら管理会社の判断で進めてよいかという金額の線引きは、契約で明確にしておく必要があります。ここが曖昧だと、知らないうちに工事が進んでいたという事態が起こります。

契約前に確認したい4つの質問

  • 維持保全と金銭管理の両方が業務範囲に入っているか
  • 冬季の除雪・水抜きは含まれるか、別料金か
  • いくら以上の修繕でオーナーの承諾が必要か
  • 長期滞納が発生したとき、どこまで対応し、その先はどうするのか

これらは契約書を読めば分かるはずの内容です。しかし読み合わせをせずに署名してしまうことが、後の「認識相違」につながります。

まとめ

  • 法律上の管理業務は「維持保全」と「金銭の管理」の2つ。両方が入っているとは限らない
  • 札幌では除雪・水抜きが含まれるかを必ず確認する
  • 管理会社は訴訟や法的な取立ての代理はできない。長期滞納時の流れを確認しておく
  • 賃料設定や修繕の最終判断はオーナー。承諾が必要な金額の線引きを契約で決める

「何をしてくれるか」を漠然と聞くより、契約書の業務範囲の欄を一緒に読むほうが確実です。その場で説明できる会社は、自社の業務範囲を正確に把握しているということでもあります。

この記事について

本記事は一般的な情報の整理です。個別の契約内容や法的判断については、管理会社および弁護士等の専門家にご確認ください。

参照した情報

失敗しない賃貸管理会社の選び方 オーナーが最初に確認すべき3つのポイント

1

入居率を公開しているか

公開している会社は、それだけ数字に自信がある証拠です。非公開の場合は、直近の実績を面談で必ず確認しましょう。

2

オーナー・入居者の対応窓口があるか

専用アプリなどオーナーが状況を確認できる仕組みと、入居者からの連絡を24時間受けられる体制。ここが手薄だと、対応の遅れがそのまま退去につながります。

3

原状回復工事の費用負担はどうか

退去のたびに発生する原状回復費は、収支を大きく左右します。オーナー負担が実質0円になる仕組みを持つ会社もあるので、必ず確認しましょう。

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