札幌の賃貸経営で、冬に最も金額の大きい事故になりうるのが水道管の凍結と、それに続く破裂です。
凍結して水が出ないだけなら、修理費で済みます。しかし破裂すると話が変わります。無人の部屋で水が出続ければ、階下の住戸まで水が回り、複数世帯の家財と内装をまとめて損なうことになります。
この記事では、札幌市水道局の公表情報をもとに凍結の条件と正しい対処を確認したうえで、オーナーとして押さえるべき「責任の所在」「保険」「管理委託契約での取り決め」を整理します。
まず数字で押さえる:凍結する条件
札幌市水道局は、凍結の危険が高まる条件を明示しています。
- 外気温がマイナス4℃以下になるとき
- 真冬日(終日氷点下)が続いたとき
- 就寝時や旅行中など、長時間水を使わないとき
札幌では1月・2月を中心に、これらの条件は珍しくありません。「特別に寒い日」ではなく「普通の冬の日」に起きる事故だと認識しておく必要があります。
そして重要な点として、凍結の修繕費用は水道局ではなく利用者の自己負担です。札幌市水道局は凍結修繕を行わず、市の指定給水装置工事事業者と直接契約することになります。
本当に怖いのは「凍結」ではなく「破裂による階下漏水」
凍結だけなら、その部屋の給水管を解かせば復旧します。しかし水は凍ると体積が増え、管を内側から押し広げて破断させます。そして気温が上がって解けたとき、破断箇所から水が流れ出します。
問題は誰もいない部屋で起きたときです。
- 発見が遅れ、水が出続ける
- 床材・下地・断熱材が水を含む
- 階下の天井・壁・照明器具に達する
- 階下入居者の家財が損傷する
- 復旧工事の間、階下も住めなくなる可能性がある
1戸の給水管修理で済んだはずのものが、複数戸の内装工事と家財賠償に膨らむ。これが凍結事故の本当の怖さです。
リスクが高まる3つの時期
凍結が起きやすいのは、部屋に人がいない時間が長いときです。オーナーとして注意すべき局面は3つあります。
① 退去日から明渡し・原状回復までの空白期間
入居者が引っ越したあと、立会いや原状回復工事までに数日から数週間空くことがあります。この間、暖房は止まり、水も動きません。しかも誰も部屋を見ていません。
退去が冬に発生した場合、鍵を受け取った時点で水抜きが完了しているかの確認が必須になります。
② 長期空室
募集中の空室は、内見のたびに人が出入りします。内見時に水を出して、そのまま水抜きを忘れる——これが典型的な事故のパターンです。
内見後の水抜き確認を誰が行うのか。ここを決めていない現場は少なくありません。
③ 入居者の長期不在
年末年始の帰省、出張、入院。入居中でも部屋が無人になる期間があります。ここは入居者への注意喚起が効く領域です。
費用は誰が負担するのか
凍結・破裂の費用負担は、誰の管理下で起きたかで考えるのが基本です。
| 状況 | 負担の考え方 |
|---|---|
| 入居中に、入居者が水抜きを怠って凍結 | 入居者の善管注意義務違反として、入居者負担となるのが原則 |
| 空室期間中(明渡し後)の凍結 | 物件の管理下にあるため、オーナー側の負担となるのが原則 |
| 建物側の設備不良や経年劣化が原因 | オーナー負担となる可能性が高い |
| 凍結対策の説明を一切していなかった場合 | 入居者に責任を問いにくくなる可能性がある |
最後の行が実務上のポイントです。入居時と冬の入り口に、水抜きの必要性と方法を書面で伝えているか。これがないと「知らなかった」という主張に対抗しづらくなります。
逆に言えば、注意喚起の記録を残しておくこと自体がオーナーの防御になります。管理会社がこれを実施しているかは、確認する価値があります。
保険は使えるのか
火災保険には、凍結による水道管の修理費用を補償する特約や、水濡れによる建物・家財の損害を補償する条項が付いていることがあります。階下漏水のような大きな損害では、これが実質的な備えになります。
ただし次の点は契約ごとに異なります。
- 凍結による給水管そのものの修理費が対象か
- それによって生じた水濡れ損害が対象か(別扱いのことが多い)
- 空室期間中の事故が対象か
- 免責金額と支払限度額はいくらか
「保険に入っているから大丈夫」と考えるのが最も危険です。冬が本格化する前に、現在の証券で凍結・水濡れの扱いがどうなっているかを保険会社に確認してください。
また、入居者側の借家人賠償責任保険の加入状況も、入居者に原因がある場合の回収可能性を左右します。契約更新のタイミングで確認しておきたい項目です。
凍結してしまったときの正しい対処
ここは誤った方法が広まっているため、札幌市水道局が示す手順を正確に押さえてください。
やってはいけないこと
凍った管に直接お湯をかけたり、直火を当てたりしてはいけません。急激な温度変化で管が破裂する危険があり、直火は火災の原因にもなります。
「熱湯をかければ早く解ける」という判断が、修理費で済んだはずの事故を破裂事故に変えてしまうケースがあります。
正しい手順
- 露出している管にタオルを巻き、その上からぬるま湯をゆっくりかける
- 解氷パイプがある場合は、キャップを外して立ち上がり管にお湯を注ぐと、床下の管を解氷できる
- 自力で解けない場合や破裂した場合は、市の指定給水装置工事事業者に連絡する
破裂している疑いがあるときは、まず水抜き栓や元栓を閉めて水を止めることが先決です。解かす前に、これ以上水が出ない状態にしてください。
水抜きの基本手順
札幌市水道局が示す手動式水抜き栓の操作は次のとおりです。
- 蛇口を閉める
- 水抜き栓のハンドルを右に回す(レバー式は「止」方向)
- 蛇口をいっぱいに開ける
- 空気入れ蛇口と水抜き用蛇口を開ける
- 水が完全に出なくなったのを確認してから、各蛇口を閉める
見落とされがちなのがトイレです。水抜き栓の操作後、排水ハンドルを回してタンクを空にし、便器には不凍液を入れるなどの措置が必要になります。
また、ハンドルを中途半端な位置で止めると、かえって凍結の原因になります。最後まで確実に回してください。
管理委託契約で決めておきたいこと
凍結対策は「誰がやるか」を決めていないと必ず抜け落ちます。管理を委託しているなら、次の項目が契約や運用に含まれているかを確認してください。
- 空室の水抜きは誰が、いつ実施するのか(退去立会い時か、明渡し後か)
- 内見後の水抜き確認は誰の責任か
- 冬季に空室を巡回する頻度はどの程度か
- 入居者への凍結注意の告知を、いつ・どの方法で行っているか
- 夜間・休日に破裂が起きたとき、誰が一次対応するのか
最後の項目は特に重要です。破裂事故は、被害額が時間に比例して増えます。夜間に連絡がついて元栓を止められるかどうかで、損害の規模は大きく変わります。
入居者からの連絡を24時間受けられる体制があるか。空室の巡回が仕組みとして回っているか。札幌で管理会社を選ぶなら、この2点は冬季の被害額に直結する要素として確認する価値があります。
冬に入る前のチェックリスト
- 所有物件の水抜き栓の位置と種類(手動・電動)を把握しているか
- ハンドルが固くなっていないか、冬前に一度点検したか
- 現在の空室すべてで水抜きが完了しているか
- 入居者へ凍結注意の告知を実施したか、記録は残っているか
- 火災保険で凍結・水濡れがどう扱われるかを確認したか
- 夜間・休日の緊急連絡先が入居者に共有されているか
まとめ
凍結そのものは、正しく水抜きをすれば防げます。実際に被害を大きくしているのは、誰も見ていない部屋で起きて発見が遅れることです。
空室の水抜きを確実に回す仕組みと、夜間に元栓を止められる体制。この2つがあるかどうかで、札幌の冬の収支は変わります。
この記事について
本記事は一般的な情報の整理です。費用負担の判断は個別の契約内容や事故の状況によって異なりますので、実際のトラブルでは管理会社・保険会社・必要に応じて弁護士にご相談ください。保険の補償範囲は必ずご自身の保険証券と保険会社への確認をお願いします。
参照した情報
- 札幌市水道局「水道の凍結について」(凍結しやすい条件、費用負担)
- 札幌市水道局「水道を凍結させないためには」(水抜きの手順、トイレの措置)
- 札幌市水道局「水道が凍結したら」(解かし方、やってはいけないこと、修理の依頼先)
内容は2026年8月時点のものです。最新の情報は札幌市水道局の公表資料でご確認ください。




