管理会社を比べるとき、多くのオーナーが最初に見るのが入居率です。「入居率98%」と書かれていれば、募集力が高そうに見えます。
ところが、入居率には統一された定義がありません。算出方法が会社ごとに違うため、A社の98%とB社の95%を並べても、どちらが優れているかは分かりません。この記事では、入居率の代わりに何を聞けばよいかを示します。
入居率が比較に使えない3つの理由
理由1|分母が違う
入居率=入居戸数÷管理戸数、と考えるのが自然ですが、実務ではそうとは限りません。
- 募集停止中の部屋を分母から外す:大規模修繕中、オーナーの意向で募集していない部屋などを除くと、率は上がります
- サブリース分を含める/含めない:サブリース物件は契約上「入居中」扱いになるため、含めると率が上がります
- 新規受託物件を除く:受託直後の空室が多い物件を集計から外せば、率は上がります
理由2|計測のタイミングが違う
札幌の賃貸市場は季節変動が大きく、3月末と8月末では入居率がまったく違います。年間平均なのか、繁忙期直後の一時点なのかで、数字は数ポイント動きます。
理由3|「いつから空室とカウントするか」が違う
退去日の翌日から空室とする会社と、原状回復が終わって募集開始した日から空室とする会社があります。後者なら、原状回復に1か月かかった部屋の空室期間は帳簿上ゼロになります。
これは重要です。オーナーにとって収入が途絶えるのは退去日の翌日からであって、募集開始日からではありません。
代わりに聞くべき2つの数字
入居率の代わりに、次の2つを聞いてください。どちらも定義が曖昧になりにくく、オーナーの収入に直結します。
数字1|平均空室日数(退去日から次の入居日まで)
「退去日の翌日から次の入居者の契約開始日まで、平均で何日かかっていますか」
この数字が、そのまま収入が途絶える日数です。60日と90日では、家賃6万円の部屋で年6万円の差になります。
この質問には、原状回復の速さと募集力の両方が反映されます。入居率ではなく、この数字を管理指標にしている会社は信頼できます。
数字2|募集開始から成約までの日数
「募集を開始してから申込みが入るまで、平均で何日ですか。時期による差はどのくらいですか」
こちらは純粋な募集力を示します。1つ目の数字との差が大きければ、原状回復に時間がかかっているということです。2つの数字の差を見れば、どこがボトルネックかが分かります。
| 平均空室日数 | 募集開始〜成約 | ボトルネック |
|---|---|---|
| 90日 | 80日 | 募集力。条件・見せ方・掲載媒体を見直す |
| 90日 | 35日 | 原状回復の段取り。業者手配と工程管理の問題 |
| 45日 | 35日 | 良好。大きな改善余地は少ない |
札幌は「9月までに動く」市場
札幌の賃貸市場は、季節性が全国でも特に強い地域です。
| 時期 | 市場の状況 | やるべきこと |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 需要のピーク。大学入学・企業転勤が集中 | この期間に決める。条件変更の判断は早く |
| 4〜6月 | 需要が急減。動きは新社会人の遅れ組など限定的 | 決まらなかった部屋の条件を根本から見直す |
| 7〜9月 | 秋の異動需要が少し動く | 次の繁忙期に向けた工事はここで終える |
| 10〜12月 | 降雪期に入り内見が減る | 掲載情報を整え、1月に備える |
この構造から、実務上の結論が出ます。
3月末までに決まらなかった部屋は、次のまとまった機会が翌年1月になる可能性があるということです。4月に「まあ、そのうち決まるだろう」と放置すると、9か月空くことになります。
したがって、設備更新や内装工事は9月までに完了させるのが基本線です。冬に工事をすると、工期も費用も伸びます。
札幌特有の需要変化
近年の札幌市場では、次のような変化が指摘されています。
- ファミリー向け賃貸の需要増:分譲マンション価格が10年で1.5倍程度に上昇し、購入を見送った層が賃貸に流れています。2DK〜2LDKクラスは堅調です
- 高齢入居者の増加:受け入れ年齢の上限を引き上げる管理会社が出てきています
- 学生向け物件の競争激化:大学近くの駅近物件でも空室が出るようになり、従来「放っておいても埋まる」とされたエリアで空室率が上がっています
「北大の近くだから大丈夫」という前提はすでに崩れています。エリアの評判ではなく、直近の成約データで判断してください。
空室対策を費用対効果で並べる
空室対策には多くの打ち手がありますが、順番を間違えると金をかけただけで終わります。効果が出るまでの速さと費用で並べると、優先順位は明確です。
| 優先 | 打ち手 | 費用 | 効果が出る速さ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 掲載情報の改善(写真・説明文・掲載媒体の追加) | ほぼゼロ | 即日 | まずここ。写真が暗い・少ないだけで問い合わせは激減する |
| 2 | 募集条件の緩和(ペット可、二人入居可、高齢者可、外国籍可) | ゼロ | 数日 | 母数が増える。ペット可は原状回復のルールを先に決める |
| 3 | 初期費用の引き下げ(敷金・礼金・フリーレント1か月) | 1か月分 | 数週間 | 賃料を下げるより先にこちら。賃料は下げると戻せない |
| 4 | 賃料の見直し | 継続的な減収 | 数週間 | 最後の手段。下げ幅は5%刻みで様子を見る |
| 5 | 設備の追加(インターネット無料、宅配ボックス、独立洗面台) | 数万〜数十万円 | 数か月 | 周辺物件との差別化になる項目を選ぶ |
| 6 | 内装のリフォーム(アクセントクロス、床材、水回り) | 数十万〜 | 数か月 | 費用回収年数を必ず計算する |
賃料を下げるより初期費用を下げる理由
家賃6万円の部屋で考えます。
- 賃料を5,000円下げる:年6万円の減収。しかも次の入居者にも、その次にも続きます。4年住めば24万円
- フリーレント1か月:一度きりの6万円。次の募集では元の条件に戻せます
入居希望者が比較しているのは初期費用の総額であることが多く、フリーレント1か月のほうが賃料5,000円減より訴求力が強い場面が多いのが実情です。一度下げた賃料は、次の募集で戻すのが難しいことを忘れないでください。
管理会社に確認する4つのこと
- 平均空室日数と、募集開始から成約までの日数を教えてください(前述の2つの数字)
- どの媒体に掲載しますか。写真は誰が何枚撮りますか(掲載の実務レベルを確認)
- 他社の仲介会社にも情報を出しますか。直近1年で他社経由の成約は何割ですか(囲い込みの有無)
- 3月末に決まらなかった場合、4月に何をしますか(撤退戦の設計があるか)
4つ目に具体的な答えが返ってくる会社は少数です。繁忙期に決めるプランは誰でも持っていますが、決まらなかったときのプランを持っている会社は限られます。ここが差になります。
まとめ
- 入居率は分母・計測時期・空室の起算日が会社ごとに違うため、社間比較には使えない
- 代わりに「平均空室日数」と「募集開始から成約までの日数」を聞く。2つの差でボトルネックが分かる
- 札幌は1〜3月がピーク。3月末に決まらないと次の機会は翌年1月になりうるため、工事は9月までに終える
- 対策の順番は、掲載情報 → 条件緩和 → 初期費用 → 賃料 → 設備 → 内装。賃料の引き下げは最後
- 「3月末に決まらなかったら4月に何をするか」に答えられる会社を選ぶ
空室は放置した日数の分だけ確実に損失になります。まずは今の管理会社に平均空室日数を聞いてみてください。即答できなければ、その時点で見直しを検討する理由になります。




